8つ目の駅の名前は、秋野。 秋野駅で、私たちは電車を降りた。 このあたりは海のすぐ近くで、海水浴シーズンになると大そう賑わうのだけれど、今は人通りも少なく、駅前は早くも静かになっている。 駅から5分ほど歩けば、ルフィの家だ。 私たちはどちらからともなく手を繋ぎ、点々と街灯の灯った道を歩いた。 「24時間営業のスーパーがあるから、そこで買い物しよう!」 「何を買ってけばいいの?」 「えっと、家のほうに大体揃ってんだ。ないのはニンニクとバナナだなー」 「なんかスゴイ取り合わせね…」 他愛もない話をしながら、通りを歩く。 …こういうのって、何か、いいなぁ。 時間を気にしなくてもいい。 人目をはばかることもない。 のんびりのんびり歩いてるだけなんだけど、それがこんなに嬉しい。 通りの向こうに煌々と輝く建物が見えた。あれが24時間営業のスーパーだ。まるで、コンビニのように自分の存在を強烈にアピールしているようにも見 える。 「買い物買い物ー」 ルフィは楽しそうに店先に積んであるカゴをとると、先に立って中に入っていった。 この街の相場は、私の実家がある街の相場と大体同じくらいだ。でも、海が目の前の分、やっぱり魚が安い。それが妙に嬉しくて、こっちに来たばかり の頃は魚ばっかり食べていた記憶がある。…実家じゃ鮭や鰯、秋は秋刀魚ばっかりだったもんね。 勝手知ったるといった感じでルフィは店内を巡り、次々品物をカゴに放り込んでいく。 ニンニクとバナナは分かるとして、卵やキャラメルはどうするつもりなのだろう? …まさかカレーに入れ…ないといいなぁ…。 「何か食べたいのあるか?」 お菓子コーナーでそう言われて、私は両脇の棚に詰まれたスナック菓子に目をやった。 品揃えが微妙という評判だけれど、お菓子は結構いろいろ取り揃えている。 銘柄の中に、昔駄菓子屋でいつも買っていたスナックを見つけ、カゴに入れさせて貰った。 「でっかい袋のヤツだとなかなかなくならなくていいんだよな」 ルフィが言う所の“なかなか”はとても短い。部室でみんなでお菓子を摘んでいるときにルフィがやってくると、さっきまで山盛りだったお菓子が奇術でも かけられたみたいに――ドロン、だ。チョッパーなんていつも被害にあっている。 「あと、カラムーチョとサラミとキャラメルコーンと…」 次々にカゴに放り込まれていくお菓子に、段々と不安になってきた。 カ、カレーよね? 今日の夕飯はお菓子じゃないわよね? 疑問渦巻く私を尻目に、ルフィは100%オレンジジュースとサイダーをカゴに詰め、颯爽とレジへ向かったのだった。 |